P90 TR (東京マルイ製)
左側面
右側面
元FNR氏所有で、SIGの手元に渡ったSMG。
○テクニカルデータ
全長…504mm
重量…2100g(ダットサイト、ライト、サイレンサー、バッテリー除く)
装弾数…68発 (多弾マグ 300発)
備考…トリプルレールモデル、サイレンサー付属、ダットサイト、ライト装備
○実銃の話
さて、この奇抜な形をした鉄砲は、ベルギーの会社「ファブリックナショナル(略称FN)」の開発した比較的新しい銃である。
正式名称「プロジェクト90」を持つこの銃は、名前の通り1990年代を狙って80年代後半に開発、世に出たのは88年の事だった。
ちなみに、この年には瀬戸大橋が全面開通する、管理人が生まれる、等というなかなか忙しい年である。
時代は冷戦期、大国同士の特大の戦争がいつ起こるかもしれない時期だった。
勿論、核戦争も懸念されたが、同時に東西両陣営の大軍同士が激突するという事態も同じぐらい懸念されていた。
大軍同士が激突するという事は、それだけ後方支援も大型化する。
そんな大型化した後方支援隊の中では、火器の取り扱いの訓練も十分ではない人間も大勢出ることが考えられた。後方支援や走行車輛部隊などは制圧任務に直接参加しないためだ。
しかし、彼らに武装は必要ないかといわれたら、それは否である。
味方前線が壊滅し、敵歩兵部隊が接近したときの自衛は勿論、敵の後方浸透時の破壊工作に対応するのは彼ら後方にいる部隊なのだ。
そこで、彼らのための銃器が必要となった。
つまり「威力はあるものの、長くて重いライフル等を必ずしも始終携行しなければならないわけではない」人たちのための銃器である。
そこでFN社は「PDW:パーソナル・ディフェンス・ウェポン」としてこのP90を開発した。
人体工学に基づいて設計されたデザインははっきり言ってそれまでの「銃」のイメージとは全く違う。
独立したピストルグリップもなければ、下に突き出すマガジンもない。
形から言えば、レーザービームなんかがでてきでも不思議ではない形状をしている。
だが、この形には理にかなった理論があり、そして実際使いやすい。
ブルバップ式のため、フルオート時の反動制御もしやすい。
空薬莢はグリップしたから排莢されるため、ブルバップ式の欠点であった「利き手を選ぶ」という問題もなくなった。
まさに完璧に限りなく近いPDWとなったが、時既に遅し、冷戦は終結し、PDWの必要性そのものがなくなってしまった。
だが、その後もP90はSMGとして活用され続けた。
つまり、「対テロ作戦」におけるCQBでの使用に適していたのだ。
小型軽量、装弾数は多く、反動は小さい。
ボディーアーマーは貫通するが、人体は貫通しないという特殊な弾のおかげで、貫通弾による民間人への被害も最小限に抑えられる。
まさにCQBにはうってつけの銃だったのだ。
ちなみに、上記の「ボディーアーマーは貫通しても人体は貫通しない」弾もこの銃と平行して開発された。
5.7mm×28弾、SS190弾とも呼ばれるこの弾は、拳銃弾というよりむしろライフル弾の形状に近く、初速もかなり速いため、剛体に関してはライフル弾並みの貫通力を持つ。その貫通力たるや、150m先のケブラー製防弾チョッキを貫通したというのだから、凄さがわかるというものだ。
だが、弾頭底部に高比重金属(主にタングステンなど)を鋳込むことにより、軟体に着弾した際は弾頭が物体内で回転し、「暴れる」ことにより人体にとどまる仕組みとなっている。
発射薬の量は拳銃並みで、反動は小さく、そのためブルバップ式の銃の形状とあわせて、非常に扱いやすくなっている。
この弾は、FN製Five seveNでも使用可能である。
(独り言)確か、ヘンリッタがP90でジョゼがFive seveNだったよな…あれも弾の共用を考えての事か…
だが、そんないい事尽くめの様なP90にも、欠点はある。
マガジン内の弾は銃身に対して90度回転した状態で装填されており、そのため50発もの装弾数を得ることが出来たが、その特殊さゆえに、素早いマグチェンジには熟練を要する、という点だ(この点は「利便性の面で策に溺れた欠点」といわれる)。
また、その弾薬の強力さ故に民間への販売はされておらず、徹底的に管理されている。
そのため、弾薬に対するコストが高くなるため、なかなか配備されないという問題もある。
その上、対テロ作戦用SMGとしてはMP5、カービンサイズまで許容すればM4等が既にその地位にあり、新たに入り込む隙間がなかったこと等も災いして、商業的に成功したかといえば「?」である。
そのためか、近年、P90、Five seveNともに民間販売されている(P90は法制度上カービンサイズまでバレル延長し、フルオートを配したPS90)が、弾薬は民間用に開発されたもので、根本的な解決にはなっていない。
ともあれ、その独特の形からメディアへの露出も多く(初お目見えは「ペルー日本大使館占領事件」)、知名度は高い。
(独り言)MGS、鬼武者、レインボーシックス、ガンスリ、スパイラル、Routes、GA等々エトセトラ
○エアガンの話
さて、やっと本題である。
いや、引き伸ばすつもりは全くなかったのだが、「あれも書きたい、これも書きたい」の状態になってしまったので。
お詫びも兼ねて、写真を増量してお送りいたします。
まず、上で書きそびれたこと。
P90には2種類あり、写真のTR型とノーマルのものがある。
違いは、ノーマルのものがダットサイト(実銃では低倍率コリメーターサイト)、TRではサイトの代わりにレールとサイレンサーがついている。基本性能に差はないが、ノーマルのP90のダットサイトが小さく見づらいという話もあり、その点こちらTRでは使用者が勝手に好きなサイトを選べばよいので、特にこだわりがなければこちらのほうがお買い得かも知れない。
ちなみに、誤解されやすいのが、TRは実銃にも存在するということ。
空想ものを多数つくるマルイ(ハイキャパ、SIG552、G3SAS、βスペツナズ等)であるが、このP90TRに関しては実在する。
多分、アメリカ合衆国の大統領のSPあたりが使ってるんじゃなかったっけな?(うろ覚え)
(独り言)ちなみに、CIAでは恐らく採用されていない、と言ってもこのねたが分かる人は恐らくいない。
さて、この銃、最初の2枚の写真を見比べてもらえば分かるように、見事なまでに左右対称である。
違うのは刻印ぐらい、というこのシンメトリーさ。
勿論、左手で扱っても全く違和感なく使用できる。
そして驚くのが、構えたときのしっくり感。
流石は人体工学を考えただけのことはあり、一発で様になる。
次の特筆すべき点はその全長
ストックを折りたたんだSIG552(465mm)といい勝負。
これでバレルの長さは倍近くP90のほうが長いのだから、恐れ入る。
(独り言)ホント、バイオリンケースに入れたくなるのも分かるよ。
そしてこのマガジン。
このダミーカートがかっこよすぎる。
これを考えたマルイの設計者さんは偉い!
ちなみに、個人的な苦言として、マガジンのサイズ。
いや、実銃がそうだから、マルイさんに一切の比はないのだが、ちょっと大きすぎると。
一体どんなポーチに入れたら携行できるのかと。
だって、こんなに大きいんだよ?
日本人なら知っている、かの金閣寺ですらこんな大きさに見える。
同じ写真に入りきらないのだ。
もう高層ビル並み。
ポーチっつか、トレーラーでも無理。
…はい、バカですね。
実際にはこれぐらい。
それでも、となりに並ぶSIG552のマガジンや、P226と比べたら分かるように、とっても大きい。
ポケットにはまず無理なので、ポーチがいるんだが…
ちなみに、HOPの調節レバーはこんなところに。
ちょっと見づらいので、ポインタを写真に載せたら拡大。
隠し方は上手いのだが、場所が場所なので、ちょっと弄りにくい。
まあ、以下のようにガチャっと取り外してしまえば何の問題もないのだが。
この状態にするまで、ボタン一つで5秒かからない。
この状態なら、よっぽど不器用じゃない限りダイヤルを回せる。
おかげで、分解清掃がやりやすい。
写真は取らなかったが、メカボックスの取り出し方もカンタンで、目からうろこである。
ホント、SIGの分解とか「出来ればしたくない」ぐらいの感じだから…
(ちなみにXM177等、フィールドストリップ出来ない旧M16系は、「二度としたくない」である)
そして、FNRさんが取り付けていたダットサイト。
SUS製のダットサイトを覗いた図
こんな感じである。
写真では分かりにくいが、とっても使いやすい。
狙われたら逃げられないわけだよ。
おそろしや。
ちなみに、付属のサイレンサーはこんなの。
消音性能は高いが、P90のHOPとの相性が悪いらしく、銃口付近がやや変形している。
繰り返すが、性能は高く、元々音の小さいP90との音の面での相性は抜群である。
このサイレンサーとダットサイトとの組み合わせのFNRさんに何度苦しめられた事か…
○総評
とっても扱いやすい銃ではある。
特にTR型は万事においてそつのない仕上がりとなっている。
ただし、P90に共通する事として、メカボックスの関係で稀にトリガーがロックされてしまう事があり、そうなると分解する事でしか直せなくなる。
その点を考慮に入れても、いい銃であるという評価が下せる。
どこかの軍隊のコスプレをする、というのでなければ、サバイバルゲームのツールとしての性能は高い。
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